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よくある疾患・症状について

よくある疾患・
症状について
COLUMN

こちらのブログでは、患者さまからよくご相談をいただく症状や病気について、実際の当院での治療例を交えてご紹介しています。
患者さまの病気に関するお悩み解消のお役に立てれば幸いです。

犬の胆泥症(たんでいしょう)と胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)について【JAHA外科認定医が詳しく解説】

― 胆のう機能異常と早期発見の重要性 ―

犬の胆泥症とは、胆のう内に胆汁がうっ滞し、胆汁が濃縮して泥状物(胆泥)となったものが貯留する状態を指します。
胆嚢(たんのう)は、肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にあり、肝臓で作られた胆汁を濃縮し一時的に貯蔵しておく袋状の臓器です。食事を摂取すると胆嚢が収縮し、貯蔵されていた胆汁が十二指腸に排泄され、脂肪の消化を助ける働きをします。

胆汁は肝臓で産生され、脂肪の消化や老廃物の排出に関わる重要な消化液ですが、流れが悪化すると胆のう炎・胆石・胆のう粘液嚢腫などの胆道系疾患へ進行する危険があります。

軽度であれば無症状のことが多く、定期的な健康診断で発見されることがほとんどですが、進行すると胆嚢炎(たんのうえん)や胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)といった重篤な病気に進行することがあります。原因は食事やストレス、他の病気など複数の要因が考えられ、予防にはバランスの取れた食事と適度な運動、定期的な健康診断が重要です。

特に、中高齢犬や肥満傾向の犬種(ミニチュア·シュナウザー、シー·ズーなど)で多くみられます。

🐾 犬の胆泥症の原因 

犬の胆泥症は単一の原因ではなく、複数の要因が複合的に関与しています。

  • 胆のう収縮機能の低下(加齢やホルモン異常)
  • 高脂血症・肥満による胆汁性状の変化
  • 内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症・甲状腺機能低下症など)
  • 炎症性肝疾患や胆管閉塞
  • 長期間の薬剤投与(一部のステロイド・免疫抑制剤・抗アレルギー薬など)

これらの要因により、胆汁の流動性が失われ、胆泥の形成・沈着が進行します。

🐾 症状

  • 軽度の場合:ほとんど無症状です。肝機能の数値が血液検査でわずかに上昇する程度で、元気で過ごしていることが多いです。
  • 進行した場合:胆泥が胆管を塞ぐと、以下のような症状が見られます。
    • 黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる)
    • 食欲不振、元気消失
    • 嘔吐、下痢
    • おしっこの色が濃くなる
  • 重症の場合:胆嚢が破裂して腹膜炎(胆汁性腹膜炎)を起こし、命に関わることもあります。

🐾 診断方法

犬の胆泥症の診断には、腹部超音波検査(エコー検査)が最も有用です。
腹部エコー検査では、胆のう内に高エコーの沈殿物や層状、あるいは砂状構造物として胆泥が
確認されるのが一般的です。

併せて、血液検査での肝酵素(ALT・ALP・GGT)上昇ビリルビン値の変動を評価し、胆汁うっ滞や肝胆道系疾患との関連を把握します。
必要に応じて、胆のう粘液嚢腫や胆石症との鑑別診断を行います。

🐾 治療と管理

胆泥症の治療は、進行度と臨床症状に応じて内科的管理または外科的治療を選択します。

内科的治療(軽度~中等度)

  • ウルソデオキシコール酸(胆汁流動性改善薬)
  • 抗酸化剤・肝保護剤(S-アデノシルメチオニン、ビタミンEなど)
  • 食事療法(低脂肪食・高消化性フード)
  • 定期的なエコーによるモニタリング(3~6ヶ月ごと)

外科的治療(重度または合併症あり)

胆泥がゲル状に固化し胆のう粘液嚢腫(mucocele)へ進行した場合や、胆のう破裂・胆管閉塞を伴う場合には、胆嚢摘出術(胆嚢切除術)が推奨されます。

外科手術は全身麻酔下で行われ、術前の肝機能評価と感染コントロールが重要です。手術後も、腹膜炎や肝機能不全の管理のため数日の入院が必要となります。

🐾予後と再発予防

犬の胆泥症は、早期に発見し適切に管理すれば良好な予後が得られる疾患です。
再発を防ぐためには、以下のような日常的ケアが効果的です。

  • 定期的な腹部エコー検査(半年~1年に1回)
  • 適正体重の維持・肥満予防
  • 高脂肪食の回避
  • 基礎疾患(内分泌疾患など)のコントロール

無症状でも、定期健診で胆泥が見つかった場合には経過観察が必要です。

ここで注意しておきたい点は、エコー検査で偶然胆泥症が発見された場合、特に臨床症状や血液検査データに異常がなければ、ウルソなどの内服薬を服用させる必要はないということです。

当院で胆泥症に関するセカンドオピニオンとして、エコー検査で偶然胆泥症が発見され、「胆嚢が汚れているのでお薬(ウルソや抗生物質)を処方しておきますね」とかかりつけ病院で言われ、長期薬を飲んでいるのにエコー検査では一向に胆泥がなくならない、という質問を飼い主様からいただくことがしばしばあります。

これは、そもそも治療対象ではない胆泥症のワンちゃんに不要なお薬を飲ませているだけなので、すぐに内服薬の服用をやめて様子を見るようにお話ししています。

過去に、胆泥症のある犬を1年間追跡調査したところ、血液検査や臨床症状に異常を認めた犬は1頭もいなかった、というデータが報告されているため、当院では、健康状態がよく、たまたま健康診断などで偶然胆泥症が発見された患者さまの場合は、ウルソなどの内服薬は服用せずに、定期的なエコー検査を実施しながら胆泥の状態をモニタリングすることを推奨しています。

以上のように、「胆泥があるからとりあえず薬を飲む」のではなく、胆嚢炎や胆嚢粘液嚢腫に発展するリスクのある胆泥症を獣医師がきちんと見極め、治療が必要な患者様に適切にお薬を処方することが肝要であると考えております。

🐾 まとめ

犬の胆泥症は、軽度のうちは症状が出にくく、「沈黙の胆のう疾患」とも呼ばれます。
放置すると胆のう炎や胆のう破裂など命に関わる合併症
を引き起こすことがあるため、
定期的な超音波検査と血液検査による早期発見・早期治療が非常に重要です。

当院では、東京大学附属動物医療センターで胆嚢疾患の治療に長年従事してきた獣医師が在籍しており、最新の超音波診断装置による精密検査や、より高度な内科治療を提供しています。さらに、当院の院長 和田はJAHA外科認定医を取得しており、胆嚢摘出など外科治療も多数実施してきた実績があります。
犬の胆泥症や胆嚢粘液嚢腫と診断され、治療にお困りの飼い主様がいましたら、ぜひオリバーどうぶつ病院へご相談ください。

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