
よくある疾患・
症状についてCOLUMN
こちらのブログでは、患者さまからよくご相談をいただく症状や病気について、実際の当院での治療例を交えてご紹介しています。
患者さまの病気に関するお悩み解消のお役に立てれば幸いです。
猫の心筋症・大動脈血栓塞栓症(ATE)とは?~早期発見が命を守るカギ~JAHA認定医が詳しく解説
心筋症とは、心臓の筋肉に構造的、もしくは機能的な異常が起こり、心臓の機能が低下してしまう病気のことを指します。
猫ちゃんの飼い主さまはよくご存知かもしれませんが、心筋症は猫ちゃんでは一般的な病気であり、循環器疾患の中で猫の心筋症は死因のトップ10の1つに入るとっても怖い病気です。
進行すると突然死や突然後足が麻痺してしまう大動脈血栓塞栓症(ATE:Arterial Thromboembolism)など命に関わる事態を引き起こすこともあります。初期には症状が出にくいため、定期的な健康診断が非常に重要です。
猫ちゃんの心筋症は現在研究が進み、以下の5つに分類されています。
🧬 猫の心筋症の主な種類
- 肥大型心筋症(HCM):心筋が分厚くなるタイプ。猫の心筋症で最も一般的。
- 拡張型心筋症(DCM):心臓が拡張して機能が低下するタイプ(まれ)。
- 拘束型心筋症(RCM):心筋の柔軟性が失われ、拡張できなくなるタイプ。
- 不整脈源性右室心筋症(ARVC):不整脈と右心拡大を特徴とするタイプ(まれ)。
- 分類不能型心筋症(UCM):上記の4つの分類に当てはまらないタイプ。
🐾 心筋症を発症しやすい猫種
心筋症はどの猫にも発症する可能性がありますが、特に以下の猫種は遺伝的にリスクが高いとされています:
- メインクーン
- ラグドール
- スフィンクス
- ノルウェージャンフォレストキャット
特に3歳以上の猫は年に1回の心臓検診をおすすめします。
🐾猫の心筋症(特に肥大型心筋症)のステージ:ACVIM分類
米国獣医内科学会(ACVIM)は、猫の心筋症について、病気の進行度によって以下の4つのステージに分類し、診断や治療に関するガイドラインを公表しています。当院でもこのガイドラインに沿って診断や治療を実施しています。
【Stage A】
- 遺伝的または品種的に心筋症のリスクが高いが、現時点で臨床的・検査上の異常が認められない猫。
- 例:メインクーンやラグドールなど、心筋症の遺伝的素因を持つ猫。
【Stage B1】
- 心エコーで心筋肥厚などの構造的異常が認められるが、臨床症状がなく、左心房の拡大も明らかでない、もしくは軽度の拡大が認められる状態。
【Stage B2】
- 無症状だが、左心房の拡大や血栓形成リスクが上昇している状態。
【Stage C】
- 心不全の臨床症状がすでに発現している状態(肺水腫、胸水、呼吸困難など)、またはこれまでに発症したことがある。
【Stage D】
- 通常の治療に反応しなくなった末期心不全の状態。
💡補足ポイント
- 猫では、犬と異なり聴診や外見だけでは心不全を見逃しやすいため、心エコー検査が診断・ステージ分類において極めて重要です。
- 特に左心房拡大や**血栓形成の兆候(左心房内の渦流など)**は、B1とB2を分ける重要なポイントです。
🐾 こんな症状は要注意!
猫の心筋症は無症状のまま進行することもありますが、以下の症状が見られる場合は早めの受診をおすすめします。
- 呼吸が速い、浅い
- 大きな声で泣き叫ぶ・苦しそうにしている
- 急に後ろ足が動かなくなる(血栓症【ATE】による麻痺)
- 食欲不振・元気消失
- ぐったりしている
- 突然倒れる・失神
【⚠️危険!猫の大動脈血栓塞栓症(ATE)とは?】
大動脈血栓塞栓症(ATE: Arterial Thromboembolism)とは、心筋症により心臓でできた血栓(けっせん、血のかたまり)が動脈に流れ込み、血流を遮断してしまう病気です。特に猫ちゃんでは、後足の動脈に血栓が詰まることが多く、非常に急激な症状(突然後ろ足が麻痺する、足先が冷たくなる、足の肉球が青白くなる、激しい痛みと呼吸が荒くなるなど)を引き起こします。

ATEを発症してしまった場合は早急な対処が必要なため、すぐに動物病院を受診していただくとともに以下のような処置を実施します。
急性治療(命を守るための治療)
- 痛みの緩和(鎮痛薬:フェンタニル、ブトルファノール、トラマドール)
- 血栓溶解剤、抗血栓薬
- 酸素吸入、静脈点滴
長期管理
- 心筋症の治療
- 抗凝固療法(クロピドグレル、リバーロキサバンなど)
ATEを発症してしまった際の死亡率は30~50%と非常に高いため、早急な対応が不可欠です。完治は難しいものの、早期対応と継続的なケアを実施することで穏やかな生活を送ることができることもありますので、「急に足が動かない」「苦しそうに鳴く」などの症状を認めた際はすぐに病院までご連絡ください☎️
🩺診断方法
当院では、以下の検査を組み合わせて正確な診断を行っています。
- 聴診・身体検査
- レントゲン検査
- 心エコー検査(超音波検査)
- 血圧測定
- 血液検査(NT-proBNP検査、甲状腺ホルモン測定など)
特に心エコー検査は、心筋の厚さや動き、心臓の大きさをリアルタイムで評価できるため、重要な検査となります。


💊治療と管理方法
猫の心筋症は完治が難しい疾患ですが、早期発見と適切な治療により、症状の改善と病気の進行を遅らせ、生活の質を保つことが可能です。
治療としてはステージごとに異なり、以下の通りです:
- ステージA/ ステージB1:無治療にて経過観察。定期的なレントゲンや心臓エコー検査を実施して、心臓の拡大や血流の異常がないかをモニターします。
- ステージB2:無症状ではあるものの、左房拡大や血栓形成のリスクが上昇しており、抗血栓薬(クロピドグレル、リバーロキサバンなど)の使用が推奨されます。
- ステージC:胸水貯留や肺水腫などうっ血性心不全の兆候を発症している状態のため、利尿剤(フロセミドなど)、血管拡張薬(ACE阻害剤)、抗血栓薬、β遮断薬・Caチャネル拮抗薬(ジルチアゼム)、胸水抜去などの治療を実施します。
- ステージD:通常の治療に反応を示さない難治性の状態のため、ステージCの治療を強化した治療を実施したり、利尿剤をトラセミドに変更・酸素吸入・QOLを維持するための支持療法の実施を行います。
病態により治療法は異なるため、それぞれの猫ちゃん一頭一頭に合わせた治療計画を立てることが重要です。
🐾 心筋症の予後(寿命)は?
猫の心筋症の予後(寿命)は、心筋症の程度により大きく異なります。症状が認められない場合は、年単位で長期的な予後が期待できます。
一方で、うっ血性心不全を認めた場合はおよそ1年半程度の寿命と報告されています。
血栓塞栓症(ATE)を併発した場合の予後はさらに悪く、救急で動物病院を受診して生存もしくは退院できた割合は30~40%程度と報告されています。
さらに、退院後の生存期間は61日~184日と非常に短く、多くは血栓塞栓症の再発を認めてしまうことが死亡リスクを高めている要因と報告されています。
🏥当院での取り組み
当院では、獣医循環器学会に所属し、東京大学附属動物医療センターで循環器診療の経験を積んだ獣医師が循環器診療をしています。猫ちゃんの心筋症に対して以下のような診察・治療体制を整えています。
✅ 専門性の高い心エコー検査
✅ 検査後すぐに結果を説明
✅ 生活改善までしっかりサポート
✅ 必要に応じて循環器専門医との連携
📅まずはご相談ください
猫ちゃんの元気がない・呼吸が荒いと感じたとき、あるいは定期検診をご希望の方は、いつでもお気軽にご相談ください。
早期発見が、猫ちゃんの未来を守ります🐱
📞お電話でのご相談:03-6454-7522
📱Instagram(インスタグラム)でのご相談も可能です!公式ホームページよりインスタグラムをフォローしてメッセージをお送りください📩
⏩ 公式HPURLはこちら:www.oliver-ah.com
🔍よくある質問(FAQ)
Q:心筋症は予防できますか?
A:残念ながら予防法はありませんが、定期検診により早期発見・管理が可能です。
Q:完治しますか?
A:完全に治すことは難しいですが、治療により長く元気に過ごすことが可能です。
Q:薬は一生飲まないといけませんか?
A:病状によって異なりますが、多くの場合は継続的な投薬管理が必要です。
